短大を卒業し、西伊豆のふるさとの町に帰ってかき氷屋を始めた主人公＝まりちゃんと、ひと夏を共に過ごすことになった少女＝はじめちゃん。自然も経済も、生気を失ってしまったふるさとの町の中で、懸命に自立し、再生させようとする少女たちのささやかな闘いの物語――

2003年11月より2004年5月まで、読売新聞朝刊にて毎週土曜日に連載されていた『海のふた』。伝説的なインディーズ・ミュージシャン、原マスミさんの名曲にインスパイアされたこの小説は、よしもとばななさんが毎年夏に家族で訪れ続けてきた西伊豆の海岸が舞台となっています。挿画として版画を制作していただいたのは名嘉睦稔（なかぼくねん）さん。読売新聞連載当初から大きな話題を呼んでいたコラボレーション作品ですが、単行本化にあたり物語・版画それぞれの魅力をより引き立てるべく、中島英樹さんが素晴らしい装丁に仕上げてくれました。ぜひ、書店で手にとってお読み下さい。