9条がリアルで大きな力だったという現実。これはもっと知られるべきなんじゃないか

『SIGHT vol.30』 2007年12月号掲載 ペシャワール会 現地元代表 / 中村哲 医師インタビュー

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── 第9条の自民党改憲案は、要は自衛隊の位置づけをクリアにするというのが肝になっているわけですが、自衛軍の位置づけも抽象的だし、「国際貢献って一体何なんだ?」と突っ込んでも実に曖昧なものになってしまう。そこのところを、日本で国際貢献についてもっともきっちり言う資格を持っていらっしゃる中村さんに伺いたいんですけど。
中村 現実的に何が起きてるかっていうことですね。
── まず小泉政権のイラク派兵によって日本のイメージは国際的に大きく変わったと思うんです。現地では日本はどのように見られてるんですか。
中村 中東、少なくともアフガニスタンでは、反日感情が急速に芽生えていると言えますね。これは国際貢献のひとつの答えじゃないでしょうか。前は、日本人であるということだけで特別扱いされてたんです。その理由は、まあ、戦争がいい悪いという話は別として、彼らがまず日本について連想するのが「日露戦争」、「ヒロシマ」、「ナガサキ」この3つは必ず知ってるわけです。日露戦争については、ほとんど列強の植民地ないし半植民地であった100年前のアジアで、極東の小さな国が時の超大国ロシアと戦争を始めた、かわいそうにこの日本もロシアの植民地になるかと思いきや、案外、勝ったとは言えないまでもまあ負けなかった。それが代々と引き継がれていて、「小さくとも大国に屈服しない不撓不屈の日本」という美しい誤解 (笑) 。
── (笑) 。
中村 そして「ヒロシマ」、「ナガサキ」は、同情と同時にその後見事に経済復興を成し遂げた。しかも羽振りのよい国っていうのはたいてい戦争をするもんだけども、50年間も戦争しなかったのがすごい、と。これが「平和国家日本」という美しいイメージ。まあ、これも誤解ですけれども、それはそれでひとつのご先祖様の遺産だったわけで。実際アフガニスタンのどんな山奥に行っても、日本人であるがために命拾いしたり、仕事がうまくいったりとかいうことは、たくさんあったんです。ところがそれが180度変わって、日本人であるがために襲撃の対象になりつつある。アフガニスタンではもう答えははっきり出ています。これが国際貢献ならやめたほうがいいと私は思います。
── つまり、日本がアメリカと共同戦線を張って、イスラム国家の仲間であるイラクに攻め込んで戦争に荷担した、という認識がクリアにあるということですね。
中村 そうです。美しい誤解が、見事に裏切られたんじゃないでしょうかね。「強い者にはペコペコする日本」、「石油の利権が絡めば武力行使も辞さない日本」というマイナスのイメージが急速に拡大してると。
── 日本側としては、「軍隊派遣ではない。現地のインフラ整備や戦後復興に協力するための国際貢献なのである」っていう理屈なわけですが。
中村 アメリカに擁立されて出来たはずのアフガンのカルザイ政権ですら、はっきりは言わないけれども不満なんですね。アフガン政府の発表では、この5年間で使われたテロリスト捜索費用が、4万人の軍隊使って300億ドルだそうです。2002年、東京で行われたアフガン復興支援会議で決まった援助額は45億ドルですから、それだけのお金があったらアフガニスタンはもっといい国になってたのに、というのが常識的な感覚じゃないですかね。
── じゃあ、日本はアメリカから要請されて自衛隊を派遣した。でも戦闘行為は一切やっていない、援助行動なんだ、というのは、まったく通じない理屈なんでしょうね。
中村 詭弁としか取られないでしょうね。それはもう誰が考えたってわかることで、敵の友は敵ですよね (笑) 。だって米軍を助けにきてるわけですから。実際アフガニスタンでは、ドイツ軍、フランス軍などNATO諸国軍が次々と狙われています。アフガン空爆のときに日本のイージス艦がインド洋に派遣されましたね。もうその段階で「日本はアメリカを助けている」ということが民衆にばーっと行き渡って。普通なら日本人に反感を持ちますよね。ただ、今のところアフガニスタンでは、日本を尊敬し続けてきた世代がまだまだ社会の中堅にいるので、「ひょっとしたら日本はだまされているんじゃないか?」とか好意的な受け取り方もあって (笑) 、名指しは避けられてますけれども、時間の問題ですね。おそらくその世代が去っていきますと、ドイツ、フランスと同じ運命を辿るでしょう。私が思うのは、国際貢献というときに、「誰のための国際貢献なのか」、「国際社会というものの実体は一体何なのか」ということです。それが曖昧なままだと現地では通用しない。だったら軍服脱いで丸腰でくればいいわけで。シャツ着てシャベル持って来るならわかりますが、映画のセットのように芝居じみた軍服でね (笑) 。
── しかし、それだけ日本のイメージがよかったことを考えれば、逆に平和憲法の持っていた抑止力は実はとても大きかったということですよね。
中村 これはすごいものがあったと思います。ともかく軍事部門には手を出さなかった。産軍複合体が生まれなかった。やはりこれは世界的に評価されていたんじゃないでしょうか。現地の人はもちろん憲法9条なんて知りませんけれども、国の方針としてそれを半世紀以上も続けたということは、非常に大きな評価だったわけです。「何したって暴力で相手をやっつけることはしない」という安心感が、強力な安全保障になっていたということ、この力を今の政治家、国民の大部分はご存知ないわけです。
── つまり日本が考える国際政治のリアリティと、現実とはかなり乖離しているというか、むしろ別個のものになっている。改憲論者たちが言う国際政治のリアリティ―、「綺麗事を言ったって、やはり軍事力は強い力なわけで、その現実の中で方針を立てていかなければ」っていうほうが、むしろ架空の議論である、と。
中村 それは現実的じゃないですね。ほぼ捏造に近いもので、本人たちが真剣にそう思っているとすれば、それはイリュージョンでしょう。幻覚に近いものがあるんじゃないでしょうか。だからそういう人たちはイラクの戦場に行ったらどうですかね (笑) 。
── (笑) 。
中村 そうしたらわかると思うんですよ。現地の民衆が一体何を考えているのか。日本が戦後東南アジアであれだけ評判が悪かったのに、それなりに受け入れられたのは、軍事力を行使しなかったからです。背景に日米安保条約やいろんな問題があるにしても、憲法に書いてあるように《国権の発動たる戦争》を一切しなかった。で、《陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない》ということを、実態は別として国として掲げてることが安全保障になっていたわけですね。これを変えるのは日本が崩壊する第一歩だと、破局の入口だと思いますね。
── つまり、「あんなものは夢物語で現実的なビジョンも何もない」と言われていたイリュージョンとしての平和憲法こそ、国際政治の中においては現実的であったし、武力以上の力を持っていたわけですね。
中村 9条の力は偉大なものがあったと思います。経済活動という観点から見ても、おそらく9条があったがために安全性は保障されたんじゃないでしょうか。
── 憲法改正の国民的な支持の背景にあるのは、「日本も国際貢献して、国際社会の中でちゃんとしたポジションに立たないといけないんだ」と。そのためには、「きっちり自衛軍を作って世界と対等に話をしていかなければいけない」という発想があるわけです。つまり、「今、日本がやり切れていない国際貢献」というのが議論の中心になっていますが、実はそんなことはなかったわけですよね。
中村 ないです。戦争しなかったというそのことが、大きな貢献だったわけです。
── では、国際貢献の最前線で活動なさっている中村さんから見て、国際社会における現実的な活動とは一体何なのか。日本のやれる一番有効なことは何だと思われますか。
中村 まず、何をすべきかではなくて、何をしたらいけないかというのを考えなくちゃいけないと思うんです。あまりに身近にあるためにその価値に気づかないということがしばしばあるわけで、むしろ今ある9条のリアリティ、これはひとつの立派な力なんです。国際貢献を声高に叫ばないということが、世界平和のために役立つことじゃなかろうかと。たとえばスペインがイラクから軍隊を引き上げましたね。列車爆破事故がきっかけだったとしても、あれ以後スペインに対する感情はよくなってきたわけで。だから日本がやるべきことは、「国際貢献」という言葉のマジックではなく、まず「武力行使をしない」ことをさらに明確に表明する。そして実際にそれを政策として打ち出すべきだと思います。憲法改正するとすれば、「永久にこれを放棄することをさらに確認する」と付け加えるべきでしょうね (笑) 。
── 吉本隆明さんも、同じことおっしゃってました。「永久に放棄する、そしてこの思想を世界に広める」と。
中村 それは正しいと思います。「これをさらに徹底する」と付ければ、これは立派な国際貢献だと思いますよ。「国際社会の平和のため」っていったって、それで戦争が起きたんですから。私、生まれてませんでしたけど。「東洋平和のためならば」ということで大東亜戦争が始まったわけで、前線に行った兵隊は「東洋平和のためならば」と聞いてきたけれども住民は反抗するし、何なんだろう?という疑問を持って帰ってきた人がほとんどだったんですね。
── 今のイラクにおけるアメリカと同じですよね。「イラクに民主主義と自由を」という思いで兵士は行ったのかもしれませんけど、行ったら現場の国民から銃を向けられているという現実。戦争というのは常にそういう性格を宿命として持ち続けてしまうということだと思うんです。
中村 逆の立場に立って考えればわかるわけで。たとえば日本で震災が起きたとして、突然外国兵がライフル持ってやってくればみんな不安になりますよね。そのときは丸腰で手伝いに来ればそれでいいわけで。しかも軍隊が軍隊に守られるというのは、いわゆる日本のいう「国際社会」の人々も笑ってるんじゃないですかね。安全だから自衛隊派遣するっていうのもおかしな話ですよ (笑) 。ホントに幼稚に見えますね。いかにも兵隊でございますという格好をして、国際貢献、国際貢献って。非常に滑稽に見えますが、滑稽だなんて言うと援助が途切れるから黙ってる、というのが実情であって、それにお気づきにならない。結局パフォーマンスばかり示して、同盟国アメリカにいい顔をしようとする。そのことが国民の生命、財産を危うくしているということを知るべきだと思いますね。
── 今、中村さんがやっているのは、国から派遣された人間じゃなく、一市民としての現地活動なんですけれども、ここでの有効性はどういうものですか。
中村 世界的に共通する間違いない援助のやり方っていうのはおそらく「相手が真に欲するものを提供する」ことなんです。たとえばアフガニスタンの場合、今、大干ばつで苦しんでいる。国民の半分がまともに飯が三度三度食えない状態。アフガニスタンの国民のほとんどが農民で自給自足に近い生活ですから、農地が次々と砂漠化していくことが一番の国家的な危機なんです。自給自足の国が砂漠化して難民が何百万人と出てる事態に対して、自国で食っていける基盤を整える。具体的に言えば農業用水、飲料水をきちんと獲得できるようにしよう、と。もしアメリカが300億ドルを費やしてそれをしたら、おそらくアフガニスタンは世界一の親米国家になると思いますね (笑) 。それが国際支援というべきものであって、それを日本の中で国際社会の都合による国際貢献を議論したって、その現実はちっともわからないわけですね。自衛軍と言ったって、日米同盟の内容を見てると自衛隊は米軍の属軍に過ぎないわけで、本当に自衛軍なのかもわからないですよね。だから右翼の立場にしろ左翼の立場にしろ、どうもわけわからないですね、この改正案は。支離滅裂ですね、こりゃ。
── (笑) 。
中村 こういうことを支持する日本国民が多数いるとすれば、これは日本そのものが危うい事態に来ているんじゃないかと私は思いますね。一時バーチャル・リアリティという言葉が流行りましたけれども、そのバーチャルということが意識されてる間はまだいいけれども、ひょうたんから駒というか (笑) 。ホントは不自然であることが、あたかも事実であるかのように言われている気がします。
── 今日本で行われているのは「平和憲法は幼稚な理想論であって現実的ではない。だから大人になって現実を見つめて、自衛隊という軍隊と言ってもいいような兵力があるんだからそれを認めて位置づけるのがリアルなんだ」という議論が中心的なんですが、まったく逆なわけですよね。
中村 言葉だけを取ればそれは正しいと思うんです。だから、「なるほど」と思うでしょうけれども、問題は現実を見つめるときに、「どうやって見つめてるのか」。
── ということですよね。改憲論者から見ると自衛隊を持っていながら「こっから出ない」とか「あそこに行かない」とかいう理論は海外じゃ通用しないよ、って論調なんだけども、むしろ思いっきり通用していたわけですね。
中村 まったくその通りです。あれはひとつのリアルで大きな力だったという現実、これはもっと知られていいんじゃないか。今言う現実論というのは、僕は今ひとつわからないですね。子どもがモデルガンいじってるうちに、モデルガンが本物のガンになってそれを使いたくなった、という感じ以上には受け止められないんじゃないですかね。本当に幼稚で非現実的なもんですね。
── だけどこの変化がアフガニスタンの山間部や農村部までリアルに伝わっているっていうのが怖いですよね。
中村 ええ。だからこれは変わるときには思ったより急速に変わっていくでしょうね。日本では現実を見つめるだの何だの言ってるけれども、僕は非現実そのものだと思います。それが1億2千万人の運命を決定するわけですから。これはどう責任取るつもりなんですかね。
── 小泉さん、辞めちゃいましたからね。イラク派兵して。
中村 急いで変えるっていうのは突貫工事なんです。重要なところを通過するための。というのもですね、僕も1年半がかりでやる予定の工事を6ヶ月短縮しまして (笑) 。それが今の議論と関係があるわけで、おそらく米軍の撤退、あるいは大混乱が近いとみんなが思っている。兵力はどんどん増強されるでしょ、またドイツ軍とか同盟軍がああいうこと(※編注:NATO主導のISAF=国際治安支援部隊に任務中のドイツ兵が平和維持、復興活動の合間に人骨で遊んでいたとドイツの新聞で報道されたこと)しでかすと、思った以上に反米感情が広がって、しかも大飢饉でしょ、大飢饉になれば傭兵として出稼ぎに出るというのはアフガニスタンではよくあったことですが、もう家族も食わせられない、アフガニスタンもダメになるということになりますと、彼らどうせ死ぬなら刺し違えてという過激な方向にいくのは目に見えてるんですね。実際カルザイ政権がタリバン法を復活させるとか内部でも相当な動きがあるんです。おそらく崩壊は近いというのが一般の見方ですね。そういう状況で、アフガン政府が渡航禁止令を出すと、我々は活動しようがない。だから今のうちに用水路の大事なとこを完成させてしまえ、ということで突貫工事なわけです。そういうリアリティは日本に伝わらないですね。
── なるほど。ところで、殲滅したかの如くいわれたタリバンが、今も強い影響力を持っているのはなぜでしょう。
中村 もし自分がアフガン人であれば当然そうなると思います。その理由は、「タリバンはこれだけ悪いやつだ」というイメージ自体が一種、操作されたものなんです。実際にタリバンはいろんな層からなっていて、他の政治グループと抗争するときにはお互いに血なまぐさいこともあったでしょうけども、中心層はアルカイダのような国際イスラム主義とは違って、どちらかというと国粋主義に近いんですね。別にイスラムを国際的に広げて改宗させてやろうというんじゃなく、自分の国ぐらいは昔の、それこそ“美しい国” に戻したい、という一種の復古主義的な運動だったわけです。たとえば、日本人が味噌汁とご飯を食べているのを、「味噌汁は臭いから飲むな」とか「ご飯は非能率的だからパン食にしてしまえ」と言われるのに近い。要するにアフガン人と自称する者は、多かれ少なかれ皆タリバン的なメンタリティを持っているんですね。ということは、タリバンという政治グループの名前が変わっても似たようなのが次々と現れてくる。これを根こそぎなくすというのは不可能じゃないですか (笑) 。アメリカに擁立されたカルザイ政権の法務省だって、新憲法ではやっていけないので8月にタリバン法を復活したんですよ (笑) 。タリバンに極悪非道のイメージを持っているのは、実は先進国くらいだと思うんです。恐ろしいのは、それが定着して国民の間で攻撃的な議論が力を持つことにつながっていくことで。メディアが発達し、情報が行きわたっているように見えるこの世界でも、世論操作は可能だということなんです。
── その誤解をベースとした戦略と外交政策が生まれていくわけですね。
中村 いやー。ひどいもんですね。
─たとえばドイツ軍が骸骨で遊んでたといったニュースは、当然アフガン国内においても都市部のみならず。
中村 それはもう隅々まで行き渡りますよ。去年の5月頃、グアンタナモの基地で米兵がコーランを破ってトイレに流したという報道(※米ニューズウィーク誌。後に誤報として記事を撤回した)だけでアフガン中、あちこちで暴動が発生したんです。ジャララバードでも発生して、私たちの事務所の隣にあった国際赤十字の事務所も襲われました。
── じゃあ今回のドイツ軍の行為も大変なことに。
中村 それはもう大変でしょうね。我々が聞いてもぞっとするような話なのに。現地の人にとっては、遺体を傷つけるというのは最高に失礼なことなのに、それを弄ぶというのは。だから何か起きると思います。米軍にしてみれば弾がどこから飛んでくるかわからないですね。
── 現地では、国連さえ欧米列国の代理店的なイメージを持たれているんでしょうか。
中村 それは定着してますね。国連がそれなりの有効な活動をしてればまだよかったんでしょうけども、国連も含めて国際機関、国際社会と呼ばれるものがしたことは必ずしも現地のためにならなかったということです。今アメリカが表向き立てている自由とデモクラシー、男女平等、これは、実はソ連軍が掲げてた改革綱領とほぼ同じなんです。だからどんな綺麗事言ったって建設隊とは見られてないというのが実態ですね、国連も含めて。
── となると、我々はイージーに国際貢献といいますけれども、現実的に、そんな正義はないわけですよね。
中村 そうです。だから国際貢献とか国際協力活動という言葉は眉唾で見るべきだと思います。しかも日本で使う「国際」という意味と現地側が受け取る「国際」とこれまた違うんですね。国際というのは「国を超えた」という意味ですけども、日本では欧米列強と歩調を合わせたひとつのソサエティのことを言ってる気がするんですよ。
── なるほど。
中村 私たちは国際協力の見本のように言われることがときどきありますけれども、自分ではこれは地域協力だと思ってます。私、田舎者ですから。九州とアフガニスタンしか知りませんから (笑) 。国際団体は地元のためになることをしてないと、これがはっきり言えることなんですね。我々の感覚からすると、どうも政治家の人たちはどっか隔離された空間で思考してきた人じゃないかなと、妙な感じがするんですね。妙だと言うと、「いや、北朝鮮のミサイルが危ない」とか国民に説得力があるような議論をいかにも出してくるという、どうもよくわからないですね。
── 中村さんは帰国の際に日本の政治家と会ってお話しなさる機会ってあるんですか。
中村 いや、ほとんどないです。会って話したって時間がもったいないような気がして。
── (笑) 。
中村 それよりSIGHTに来て意見を述べたほうがいいんじゃないかと (笑) 。政治家が幼稚で、見識のある人がいないわけですね。頼りのアメリカにも大した人はいない。げんこつさえ振り上げれば何とかなるような幼稚な、そしていじめやすい者を相手にチクチクやるとか。こんなことやっていると、いじめもなくならないわけで、大人がまず手本を示すべきです。
── 中村さんから見て、日本ってどうなるんだろうみたいな感想はありますか。
中村 あんまり言うとオカルト的に聞こえるんで控えていますけれど、私はもう破局の入口に日本は立ったと思います。しかし、それに対して無闇に不安を抱く必要はないんだと言ってるんですよ (笑) 。そこまでに先鋭に煮つめなくとも、9条が本当に説得力のあるひとつの力だということを、くどいようですがみんなご存知ないと。このリアリティはすごいものがあったんですから。だから、北朝鮮が攻めてくるんでミサイル、ではなくて、自分たちは平和的な手段を尽くす、どこの国とも仲良くするのが国策と言えば、これほどの安全性はないわけです。しかも安くつく (笑) 。アメリカから武器買わなくてすむわけですからね。

聞き手:渋谷陽一