罪もないひとを巻き添えにして政治目的を達することがテロリズムならば、欧米諸国以上のテロリズムはありません

『SIGHT vol.34』 2008年1月号掲載 ペシャワール会 現地元代表 / 中村哲 医師インタビュー

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── テロ特措法関連の取材攻勢で、政治家の方ともたくさん会われているようですが、「なんだかやたらと国会議員が話を聞きたがるぞ。これはいったい何なんだ?」というような皮膚感覚がありませんか。
中村 そうですね。国会議員だけじゃなくて、マスメディア関係もそうなのですが、これは6年前、9・11の頃とほぼ同じで現地の正確な情報があまりに乏しいということかと思います。抽象的な議論だけが先行している印象がどうしてもぬぐえなかったですね。
── なるほど。テロ特措法の関係で、いったいあの法律が現実にどう機能するのかというようなことを、抽象論で語っていて全然わかっちゃいないぞと。現実ではどういう意味を持つのか、中村さんの言葉を聞いて、それこそ小沢さんもびっくりしたんじゃないかなと思うんですが、実際にお会いしてお話になった印象はどうですか。
中村 小沢さんには8月頃にお会いしましたが、民生を中心に、ということを盛んにおっしゃっていて、それは僕は正しいと思いました。ただ、アフガニスタンの国内の状況ということについては、皆さんあまりご存じなかったですね。
── ここへきてようやく、日本にも関心を持つ人が増えてきましたね。
中村 そうですね。政治の行方もあるんでしょうけども、それだけでもまだ、マシなことになるんじゃないかと思います。固定観念や先入観が支配する中で抽象的な空中戦やってるという状態のなかで、少しでも私の話に耳を傾けてみようとする人はまあ正常な方に属するんじゃないかと思います。
── テロ特措法みたいなものは、これまでは与党の思うままに通っていたんですが、参議院での与野党逆転で阻止できるというリアリズムが出てきました。そこで民主党としても発言に責任を負い根拠を作らなければいけないという気持ちが強くなり、中村さんのお話を聞きたがっているんだと思いますが、中村さんとしてはどうですか。
中村 民主党に限らず、日本国内でのアフガニスタンについての議論は、小田原評定に近いんじゃないかとは思いますね (笑) 。というのは、日本にあまり知られてませんけれども、アフガニスタンの首都・カブールは反政府陣営にすでに包囲されているんですね。タリバン、あるいはその同盟軍がすでに農村地帯をバックにして首都を包囲しつつあるということさえ知らない。毎日数百名という単位で人が死んでいることも知らない。今、ISAF(国際治安支援部隊)と米軍で5万人の兵力がアフガンに駐留していて、軍事活動がますます活発化しています。選挙も行われ復興も進んでるといわれながら、なんでそんなに軍隊がいるのですか。そのことへの基本的な疑問もなく、「国際社会」との協調だとか「国益」とか、抽象論ばっかりが戦わされてるので異様な感じがしました。
── では、日本でいろいろお話になることは、若干の徒労感と、でもこれはやらないと現実的にアフガンでの中村さんのお仕事も進まないという現実感と両方ですね。
中村 そうですね。やっぱり現実を知ってもらった上で国が動いてくれないと。私たちは水路を作ってみんなが潤えばそれでいいことですが、日本の動き方によっては命にかかわるということがありますので。
── ではテロ特措法ですが、率直に中村さんのご意見をうかがうとすると、いかがですかね?
中村 これは6年前に私が、それこそ民主党の証人として国会に立った時と全く同じです。有害無益です。本当に早く止めて欲しい。まず、アフガニスタンにとって「反テロ戦争」という名の軍事協力から得られるものはほとんどありませんでした。それどころかかえって民間人の犠牲者を増やし、武装勢力の力が拡大するのを手伝ってしまった。
── 日本が積極的に関与していくことのデメリットというのは、何が一番大きいですか。
中村 やっぱり対日感情が悪化したこと。それによって私たちの仕事そのものに障害が出てしまいます。日本人に対する評価が今180度変わりつつあるんです。かつてはアフガニスタンは、世界でも対日感情の最もいい国のひとつだったんですね。その理由のひとつは、戦後の日本が軍事的な活動をしなかったということです。それが最近では「米国及び日本を含む同盟者」とひとくくりで呼ばれるようになってきています。「それはテロリストの言うことだ」といえば日本では説得力を持ちますけれども、アフガニスタン現地では、アルカイダのような国際イスラム主義運動と、民族主義的で土着的なタリバンは本質的に違うものです。そういうタリバンのような人たちの間で評判が悪いというのは、日本の安全性を考えてもかなり危機的です。
── 中村さんはいつも、テロとの戦い、あるいは国際協力という耳当たりはいいけどその実質を持たない言葉と、アフガニスタンで現実に行われていることにあまりに距離がある、とおっしゃっていますよね。
中村 我々は東部の方しか知りませんけれども、日常的に見る軍事作戦の犠牲者は一般農民ですよ。どういうことかというと、例えば反政府的な武装勢力がいるということで、米軍が出動しますが地上軍だとやられる可能性がある。自分の国の軍隊で死者を出すと反戦運動が高まるおそれがあるので被害が少なく収められるように空からヘリコプターで攻撃します。そうするとわずか十名足らずの人々を攻撃するのに数十人は巻き込んでしまう。そしてヘリコプターも撃墜されるようになってくると、今度はジェット戦闘機を繰り出して、例えばビル内に反政府的な人がいるというと、ビルそのものを爆撃してしまいます。そのなかで死ぬのは民間人です。アフガンは復讐社会ですから、外国人に対して敵意を抱き攻撃するようになる。だから、一般の農民も外国人の襲撃に加わり始める。その悪循環の中で、2年ほど前から急速に反政府勢力、主にタリバンの軍事勢力が実効支配をじわじわと広げている。しかも首都カブールは、干ばつが続き農村で暮らしていけなくなった出稼ぎの貧民層が押し寄せて、かつての100万都市が今は数百万人にふくれあがっています。ちょうどロシア革命、フランス革命前夜の状態に近い。火を点ければバッと燃え上がる状態です。そういう実態を見て日本に戻ってきますと、何かちょっとこう、とぼけたようなね。小田原評定と言ったのはそういうことなんです (笑) 。
── そういうアフガニスタンの現状を見もせずに、日本では自民党も民主党も、米軍なり国連なりに協力する形の国際協力を想定していて、でも国連軍も評判が悪いんですよね。
中村 これは悪いです。やっていることが米軍の肩代わり以上のことではないし、全体としてモラルが低くISAFは、ある意味では米軍以上に凶暴ですから。その地域の住民の文化なり考え方を尊重しないと軍は支持は得られませんよ。傍若無人で、例えば厳しい禁酒国であるアフガニスタンで、装甲車の上でワインをラッパ飲みして、ビンを通行人に投げつける。おかげでうちの運転手は死ぬところだったんです。かなり綱紀がゆるんでますね。それに墓を暴いて頭蓋骨で遊んだり、現地の人の神経を逆なですることを盛んにやっている。現地の人は表向きは「感謝している」と言いますけれども、そうでも言わないとタリバンだ、テロリストだと逮捕されたり殺されたりしてしまいます。
── となると、そこへの支援こそがテロとの戦いであり、世界平和の道であり、そして国際協力であるという議論の中での、テロ特措法を通す・通さないと言っている日本の現状というのはもはや現実感のない国としか理解できないですね。
中村 例えれば、患者を放っておいて、医者が離れたところで治療について会議している、患者を直接診察せずにディスカッションしているようなものですね。
── その現実を踏まえて、じゃあ何ができるのか、何をすべきなのか。そのへんはどうお考えになりますか。
中村 まずは、何をしたらいけないかということです。誰も言わないですけど、まず人を殺しちゃいけないですよ。それから政治家や評論家のインチキに乗らない (笑) 。
── (笑) 。
中村 日本人はせっかちなんですね。急いで「じゃあそれに代わるものとして」と言ってISAFなんかを出してくるからダメになるんで、「我々は軍事プロセスには関与しない」と言うだけでインパクトがある。復興支援にしたって、この状態の中で成功するものの方がまず少ないです。だから時間をかけてじっくりやればいいわけで、私は医者ですから言いますけれども、診断なくしては治療はできないんです。だから民生支援なら「民生支援をやります」ということを断固として表明して、しかしちゃんと実情を調査した上で有効な手だてを打ちます、これでいいんですよ。
── そうした中でまず診断を考えると、このシビアな状況を作った一番の要因は干ばつで多くの飢えた人たちが生れてきてしまったということですが、やはりこの干ばつはすごく大規模なものだったんですか。
中村 すさまじいですね。それも年々悪くなっていく。昨年の時点で、世界食糧計画(WFP)が発表したのが、アフガニスタンの食料自給率が6割を切ったということですね。元々アフガニスタンは自給自足の国で、干ばつ前の食料自給率は94%。100%に近かった。それが6割を切ったということは半分近くの国民が食えなくなったということに等しいわけです。今年は8月下旬の段階ですでに真冬並みの水位に下がっている。だから米・トウモロコシが各地域で大きな被害を受けている。国民がまともに食っていけない状態で、戦争どころじゃないというのが現実なんです。そのことは繰り返し言ってきたんですけれどもあまり現実味をもって報道はしてもらえなかった。いたずらに政治現象ばかりが報道されてきたという気がしてならないですね。
── ここ数年、アフガニスタンでのケシ栽培が膨大に増えたと言われています。
中村 ヨーロッパ諸国でのアヘン需要の高まりと同時に、アフガニスタンでは干ばつを背景に農民が少しの雨でも出来、換金性の高いアヘンを作らないと生きていけない状況ができあがってしまったんです。家族を食わすためにはやむを得ないということで作る人がほとんどです。これは需要があるから供給がある、たしなむ側の責任も考えてほしいのですが。
── 自分たちが需要国でありながら、アフガニスタンはアヘンの供給地だからよくない、という論調です。
中村 あの、アメリカに擁立されたカルザイ政権でさえ、たしなむ人の方は叱らないのかということを堂々と言っています。タリバン側は「我々がそれを資金にしているというのは言い過ぎだ」と。だいたい、政府高官と外国の助けがないと我々だけではそれを運ぶ力がないと言ってまして、私はかなり正しいと思います。
── そもそもタリバンが支配をしていた頃のアフガニスタンはそれなりの秩序が保たれていて、違法な犯罪や無秩序なケシ栽培は抑制されていたぐらいなんですよね。
中村 アフガン的な秩序と言っていいんですが、タリバンというのはいい意味でも悪い意味でも宗教的な政権で、反イスラム的なものには厳しくて。煙草まで一時禁止した時期があったんです。我々喫煙者にとってきつかったんですけど (笑) 。ケシ栽培の取締りは本当に徹底してました。あの干ばつにもかかわらず、政権末期にはケシ栽培はほとんどなくなってましたね。今考えると夢みたいなことですが。脅して作らせないというのではなく、宗教的な倫理に訴えるような形でケシ栽培を止めさせて。
── それこそ傀儡(かいらい)政権であるカルザイ政権そのものも、タリバンの穏健派と現実的な秩序を擁立していく方法を模索しているようですが、そうでもしなければ国としての体裁がもはや維持できないっていうところまできているんですか。
中村 タリバンが交渉のテーブルに着くように呼びかけている。しかもそれが日本に伝わっていない。タリバンを排除せよとかこの期に及んで何を言ってるんだ?という感じがしてならないです。
── となると、現実的にそこまでタリバンが勢力を広げてきたとするならば、最終的には内戦が避けられない。
中村 はい。そして、反政府勢力は勝たないにしても、負けないでしょうね。
── そうなるとカルザイ政権はともかくとして、国連軍もアメリカ軍も国際的なメンツにかけて兵力を集中する可能性も高い。悲惨な戦争が起きてしまうのでしょうか。
中村 全くその通りです。象徴的な出来事が最近あちこちの州で起きています。中央から派遣された州知事がもうアフガン人同士で殺し合うのは止めようと休戦協定を結んでたら、そこに外国軍がやってきて、タリバンの保護下に入っている村を爆撃し何十人もが殺される、というような事件が日常化しているんです。
── 政府の役人を含めて、アフガン人なら誰でもタリバン的な要素を持っていますから、誰がタリバンかなんて区別はつきにくいんですよ。それをあえて白黒分けて「こいつは悪いやつだ」と攻撃する。その過程で元来タリバンとは何も関係ない人たちまで殺してしまうというのが一般的なパターンですね。肉親を殺されることで、武装勢力とは関係なく、外国人に恨みを抱いて襲撃する人は増えてくるでしょうね。あるいは自分たちの復讐を代弁してくれるタリバン軍事勢力を支持する層も急速に拡大してくるでしょう。現在進行形の悪循環です。 ── 中村さんが、望みはただひとつ。「ほっといてくれ」と書いていました。
中村 もう、助けてくれなくてもいいから、ともかく外国人は出て行ってくれという人がほとんどですよ。
── それこそカルザイ政権も、政治のリアリズムにおいて、現実的にタリバンと手を組んで新しいアフガニスタンの秩序を作っていこうという判断は、ひとつの知恵でもありますよね。
中村 自然な流れだと思いますね。
── 国連軍やアメリカ軍がいるからこそ、平和が実現しないという非常に倒錯した構造が今生れてしまっているんですね。
中村 まったくおっしゃる通りです。私たちが現地の活動で堅く守ってきたのは、政治権力を誰がとるかということはアフガニスタンの内政の問題であるということですね。こっちとしては徳川家康が出ても、豊臣秀吉が出ても、それは彼らの選択であって外国人は口を出してはいけない、っていうのが基本的な姿勢なので。これさえ守ってれば我々を襲撃する人はいないですから。
── ただ、国際社会の論理だと、それはタリバン政権というテロリスト国家を作ることなんだというロジックになります。アフガニスタンの現実とは全く相容れない。現実に行なわれていることは、アフガニスタンの国民からすれば、「NATO軍やアメリカ軍のやり口の方が全く関係ない市民を殺戮して、しかも彼ら自身が裁かれないということにおいて、より悪質なテロ行為である」。そういう認識なのではないでしょうか。まさにテロ国家そのものが国連軍であり、NATO軍であり、米軍であるという。
中村 おっしゃる通りですね。テロリズムの目的は、かつては弱者が大きな権力に刃向かう時にとる最後の手段でした。だからワシントンもアメリカ独立に際しては、イギリス本国にとってはテロリストだったし幕末の志士もテロリストです (笑) 。最近は、テロリストという言葉の響きが変わってきまして、政治目的を達するために罪もない人を巻き添えにするということがテロリズムの定義とするならば、欧米諸国の軍以上のテロリズムはないんじゃないかと私は思います。
── それはアフガニスタン人のごくごく自然な感情としてもあるということですか。
中村 はい。普通の人がそう考えてます。ただそれを外国人にもらしますと、「アイツはテロリストの味方だ」という烙印を押されて捕まることもある。自由主義どころか恐怖政治です。みんな言いたくてもものが言えないんです。
── 非常に良くない状況ですね。
中村 ニューヨークの同時多発テロ事件のような大規模な国際テロリズムの実行犯というのは、実は欧米社会の、先進国社会の病理の中からうまれてきた高学歴の青年たちなんです。現にあの実行犯の中にはひとりのアフガン人もおりません。あのアフガニスタンの田舎者のタリバンが、世界の中心がアフガニスタンでみんなパシュトゥン語を喋ってると信じてる人たちがアフガニスタンを越えて、何かできるという素地はほぼ皆無だと思います。タリバンは土着の国粋主義であって、同じイスラム教だということで国際イスラム主義のアルカイダと多少の資金面で結びつきができたということなんです。本質的には全く相容れない傾向のものなのに、同一に“イスラム原理主義集団” という言葉でひと括りに論じられてしまって。テロリズム、テロリズムと言いながら、その実態の詳しい分析なり研究はほとんどないんですね。その認識の浅さがひとつの混乱を生み出しているんじゃないかという気がしてならないです。
── 中村さんは、徒労感を感じながらも日本中を話してまわり、アフガニスタンの状況を1ミリでも前に進めるんだという。
中村 情報操作というのは恐ろしいと思いました。日本人は特に権力に弱いので、事実を言ったり知ろうとしたりすると社会的に不利になるんじゃないかとか、そういうことで口をつぐむ。そのことが悪循環になって返ってくるんでしょうね。
── やはりアフガニスタンの現実は厳しいし、これから悪化していくであろうと予想されるわけですか。
中村 これはもう確実に悪化しましたね。ソ連軍がいた頃、今から十数年前ですか。私たちがアフガニスタン国内で活動を始めたときはアフガン戦争のまっただ中で、西側ではソ連はこのままアフガニスタンに居続けるんじゃないかという見方が一般的だった。それが十年で崩れてしまったということを考えると、今の状態もそう長続きはしないというのは確実でしょう。アメリカはソ連以上にアフガニスタンについての情報を持ちませんので、おそらく時間の問題だと私は思ってます。もう、現にその兆候が起きている。
── ただ、そこで予想されている展開は内戦しかないわけで、そうなるとなかなか厳しいですね。国際社会が意地になったら長期化してしまう。最終的に誰がそのツケを負うのかというと、アフガンの人たちです。
中村 現在のテロリズムの震源は、過去の歴史を含めて「国際社会」つまり欧米先進諸国にあると思います。欧米先進諸国こそが国際テロの温床であるという逆説です。これの病理は誰も言及しない。あのアフガニスタンから、のこのこライフルを担いでニューヨークまで出てこれる人はいないと思いますけどね。
── そうですね。イギリスでもそれこそビン・ラディンを例にとるまでもなく、多くのテロリストたちが欧米で学び、欧米で学習し、欧米で生活していた人たちが多いですよね。ほとんどですよね。
中村 ほとんどですね。
── 彼ら自身が、まさに中村さんのおっしゃる先進国社会の病理に感染し、その中で自分たちの行動原理をテロにしか求めることができなくなって、という構造です。
中村 だからそれを発散させる場所としてアフガニスタンが選ばれてるというような現実で、これはもう迷惑な話なんですね。現地の人にとっては。
── なるほど。なかなか厳しいですね。でもまあ、その中において中村さんはそれこそ水路をつくり続け、井戸を掘り続け、その中で現実が一歩一歩変わっていけばということで、2年分の予算を1年で全部注ぎ込んで、水路だけは突貫工事でつくるのだ、というビジョンで作業を進めているんですよね。
中村 この23年間の活動を見てても、平和であった時期の方が少ないんです。戦争と戦争の合間に一挙に活動して、戦争がある時はじっと、少しずつ少しずつ、おとなしくして活動を広げるということをやってきました。そういう意味ではこれからも活動内容そのものはほとんど影響受けないんじゃないかと思いますね。軍閥の政権ができようと、アフガン、タリバン政権ができようと、これは彼らの内政問題だというスタンスを崩さなければ、農民のための事業は歓迎されこそすれ、邪魔されることはないんじゃないかと考えています。
── まさに、現地で生活している人々の支持さえあれば、そこにはいわゆる事業のリアルがあるわけですからね。
中村 彼らが我々を捕まえて殺そうとかいう動きがない限り、私が彼らの日常が悪いなどというつもりは全然ないですよ。逆に日本の日常そのものが誤ってるんだというつもりもないですし。
── それにしても、日本でも過密なスケジュールで活動をされていて。アフガンに戻られても休む間もなく仕事があると思いますが体調は大丈夫ですか?
中村 皆さんそうおっしゃっていただきますが、私は現場人間なので、現場で働いてる時が一番幸せで健康なんです。

聞き手:渋谷陽一