Introduction
オフィシャルグッズの企画・販売、会場の運営・設営、アーティストが立つステージの制作。 それぞれ異なるセクションをチーフとして率いる3人は、どのような思いで一つのフェスを作り上げているのでしょうか。「参加者が主役」という共通の理念を軸に、準備の舞台裏や現場で大切にしていること、仕事のやりがいについて語り合ってもらいました。
Jフェス制作部 設営チーム チーフ
渡邊
Jフェス制作部 MDチーム チーフ
阿部
Jフェス制作部 ステージ制作チーム チーフ
平岡
※写真左から順
フェスの準備は1年前から。それぞれのセクションの動き方
――早速ですが、皆さんの自己紹介をお願いいたします!
阿部
Jフェス制作部の阿部です。2018年に中途採用で入社しました。広告営業などを経て、現在はMDチームのチーフとして、フェスのオフィシャルグッズやアーティストグッズの企画・販売管理、「rockin'star」というアパレルブランドの担当をしています。
渡邊
2018年に新卒入社した、Jフェス制作部の渡邊です。阿部さんと同じ入社年次ですね。入社後はチケット関連業務や渉外業務、運営などを経験し、現在は設営のチーフとして、会場内の運営施策の立案・実行やレイアウト設計などを担当しています。
阿部
渡邊さんとは同じ年に入社していますが、担当してきた業務はかなり違いますよね。
渡邊
そうですね。ただ、阿部さんとはグッズの販売エリアや参加者の導線について相談することも多いので、今の業務では密接に関わっています。
平岡
2022年に中途入社した平岡です。これまで設営や運営、装飾制作に関わってきましたが、今年からステージ制作チームのチーフを担当しています。
僕はお二人より後に入社しましたが、設営・運営の業務を通して、渡邊さん・阿部さんのチームとはこれまでも一緒に現場を作ってきました。
今年からはステージ制作という新しい立場でフェスに関わっています。
――本日は、フェスができるまでにどれくらいの時間や労力がかかっているのかということを、いろんなセクションでチーフとして活躍している皆さんにお伺いできればと考えています。早速ですが、フェスの開催に向けて、準備はどのくらい前から始まるのでしょうか?
渡邊
セクションにもよりますが、全体が動き出すのは直前のフェスが終わってからです。開催して見えてきた反省点や「もっとこうしたい」というアイデアを、次のフェスの準備に活かしていきます。そのため、一つのフェスの開催期間が、次のフェス作りの始まりでもあるんです。ただ、グッズに関してはもっと早くから準備を始めていますよね…?
阿部
グッズに関して言えば、1つのフェスの準備でトータル1年かかっています。たとえば、ROCK IN JAPAN FESTIVALが終われば、すぐに翌年の同フェスのグッズ企画を、どのように組み立てていくかという議論が始まります。
最初は販売実績や参加者の反応、実際に参加者が身に付けていたもの等を振り返りながら、次の年に求められるものを考えるところからスタートします。実際にグッズが参加者の手に渡る頃には、企画を始めてからほぼ1年が経っていることになりますね。
平岡
一方でステージに関しては、アーティストさんの出演プランなどが決まるのが比較的直前になるため、本番約1ヶ月前から100組以上の対応を一気にさばいていくようなスケジュール感になります。
渡邊
同じフェスを作っていても、準備のピークはセクションごとにかなり違いますね。
平岡
そうですね。MDチームが長い時間をかけて準備を進めている一方で、ステージ制作は出演内容が固まってから一気に動く。その違いはありますが、最終的にはすべてのセクションが同じ開催日に向かって合流していくイメージです。
現場スタッフへの理念の共有とコミュニケーション
――フェスの現場では、社内外含め、非常に多くのスタッフが関わると思います。ディレクションにおいて気をつけていることはありますか?
渡邊
社内の話で言うと、Jフェス制作部、Jフェスマーケティング部という部署が中心になってフェスを作り上げています。元々イベント部という1つの部署だったんですが、2026年より2つの部署に分かれました。人数は2つの部署をあわせて約30人と、意外と少ないです。ですが、フェスの現場には協力会社が約30〜40社、アルバイトスタッフを含めると3,000人近くが関わっています。
社内の少人数のチームだけでフェスを作りあげることはできず、多くのスタッフと力を合わせることで、初めてあの空間が出来上がります。
多くのスタッフとひとつのフェスを作り上げるためには、全員とフェスの理念を共有しなくてはなりません。たとえば、参加者と直接接するアルバイトスタッフ一人ひとりの対応が、フェスの印象に直結することもあります。
だからこそ、私たちがフェスで成し遂げたい理想や「なぜそれをやるのか」という理由を、まずは協力会社の方々にしっかり理解してもらうよう努力しています。そして、それを現場で働く方々に伝えてもらうことを徹底しています。
平岡
Jフェスのスタッフは、日本のライブエンタメ界を代表する、超一流の方々ばかりです。渡邊さんの言う通り、そうした幾多の経験をくぐり抜けてきたスタッフに対して、ロッキング・オンの「参加者が主役」という理念をしっかり伝えて体現してもらうのが、我々の役割ですね。
阿部
MDチームに関して言えば、当日約500人のアルバイトの方々に稼働してもらっています。多くの人と一緒に働く中で、私が現場の皆さんに想いを伝える時は、「お客さんに笑顔になってほしい」「楽しんでほしい」というように、極力誰でも理解しやすい言葉に変換する努力をしています。また、暑くて忙しい中で頑張ってくれている皆さんに直接「ありがとう」と伝えに行ったり、お客様からいただいた嬉しい声を直接共有したりするよう心がけています。
「参加者が主役」を突き詰める
――ロッキング・オンのフェスの大きな特徴は何だと思いますか?
阿部
先ほど平岡くんが「参加者が主役」と言っていましたが、すべての判断基準が参加者にあるという点です。たとえばグッズも、私たちが提案したいものではなく、「本当に参加者が欲しいものは何か」を徹底的に調査して企画しています。一言で欲しいものと言いましたが、参加者は老若男女様々な方がいるため、答えが一つではないのが商品企画の難しいところです。なので、データ分析はもちろんですが、様々な街に足を運んで街ゆく人の実際のファッションを観察したり、SNSの流行を見漁ったりと、結構泥臭く丁寧に調べています。
そのうえで、単に流行しているものを取り上げるのではなく、「参加者にとってフェスの一日をより楽しめるものになっているか」という視点で企画を具体化していきます。
平岡
ステージにおいてもそれは同じです。FOH(客席エリア中央付近にある、参加者が聴く音を調整するための音響卓)のテントをステージ正面から外すことで、参加者にとってステージがいちばん見やすい位置を確保したり、前方エリアの導線を数センチ単位で調整したりして、少しでもステージが見やすくなるようにするなど、参加者が快適にライブを見られる環境づくりに徹底してこだわっています。
渡邊
僕らはイベント制作のプロである前に、参加者のプロであるべきだという意識を持っています。フェスの度にアンケートを取って改善点を模索していますが、その際も、ただアンケートからヒントを得るだけでなく、その奥にある「本当は何を求めているか」を見抜こうと努力を重ねて、フェスを進化させ続けています。
たとえば、通信環境改善のための大規模なフリーWi-Fiエリアの導入や、飲食・グッズのモバイルオーダーの導入など。参加者のストレス解消と快適さの追求を第一に考えていますね。
あとは、たとえばJAPAN JAMが2017年に千葉市蘇我スポーツ公園で初めて開催したときは、会場の砂埃に悩まされたんです。その他にも、公園に多くのフェンスがあって参加者が移動しづらい・ステージが見づらいなどの課題もありました。
普通なら仕方ないと諦める部分かもしれませんが、ロッキング・オンは行政の協力も得て、砂埃対策の芝生を敷いたり、導線の妨げになる障害物を移設していただく交渉をしたりして、会場を大きく変えていったんです。
徹底的に理想に近づける努力をしつづけるのが、我々の最大の強みだと思っています。
笑顔を生み出し、世界一のフェスを目指す
――仕事でいちばんやりがいを感じる瞬間を教えてください。
渡邊
本番日に参加者の笑顔を見た時ですね。参加者が笑顔になっているということは、フェスに没頭して楽しめている証拠であり、自分たちの仕事が実ったんだ、と実感できます。参加者を笑顔にして、ビジネスとしても成立させられる、素晴らしい仕事だと思っています。
阿部
私も、参加者が会場で楽しんでいる笑顔を見れた時がいちばんやりがいを感じますね。自分たちが1年かけて作ったグッズを、楽しみにしてきてくださったフェスの1日に着る服として選んでくれて、最高の笑顔とともに過ごしている姿を見たときは、「頑張ってよかった」と本当に嬉しくなります。商品制作の中では、うまくいかなくて壁にぶつかることもたくさんあります。その時の原動力も、会場で見た参加者の笑顔だったりします。
平岡
自分もお二人と同じです!
長くなってしまうんですが、装飾に関して、話したいエピソードがあって。ROCK IN JAPAN FESTIVALの会場中央に皆さんがよく通る大きな通路があって、その真ん中には毎年大きな装飾があるんですけど、僕はその制作も担当しているんです。
2022年にROCK IN JAPAN FESTIVALは蘇我スポーツ公園に移転して、同会場で毎年開催するようになりましたが、もともと蘇我ではJAPAN JAMも開催していました。なので、同じ会場でも違う魅せ方ができていないと、参加者に満足してもらえない。よりシンボリックな装飾を作って、参加者が会場に来た時に「ROCK IN JAPAN FESTIVALにやってきた!」と思ってもらえるようにしたいというのが、あの装飾の制作を始めたきっかけでした。
作り上げる度に「これ、来年はオブジェの真ん中から煙を出したら、もっとかっこいいんじゃない?」など、様々なアイデアが生まれて、毎年進化を続けています。
野外ということもあって、なかなかうまくいかないこともあるんですが、それも含めてやりがいのある仕事です。
何が参加者にとっていちばん喜んでもらえるのか、皆さんが求めているROCK IN JAPAN FESTIVALらしさって何かということをとことん突き止めて作り上げています。
――最後に、皆さんが今後やってみたいことや目標を教えてください。
渡邊
「Jフェスを世界一のフェスにする」ことです。あらゆる面で世界一だと、胸を張って言えるフェスにしたいです。フェスは「これがゴールだ」という絶対の完成形があるわけではなく、時代や参加者の求めるものによって、目指すべきゴールも常に変わっていきます。時代を読み、若い世代の意見を取り入れながら、常にゴールを更新し、その時々のナンバーワンを目指していきたいです。
阿部
参加者の好みは、数年も経つと大きく変化します。過去の成功体験に囚われず、時代が変わっても「その時、参加者が求めるものは何か」を追求し続けられる唯一無二のフェス制作チームを作っていくことが目標です。
過去の実績は大切なヒントですが、それが次の正解とは限りません。データや参加者の声と向き合いながら、常に現状を疑い新しい提案をし続けられる組織にしたいと思っています。
平岡
渡邊さんからナンバーワンって言葉がありましたけど、ステージ制作としては、参加者だけでなく、出演するアーティストからも「Jフェスがナンバーワンだよね」と思われるフェスでありたいです。
アーティストが「Jフェスだから出演したい、こんな特別なライブをやりたい」と思ってもらえるような環境を一緒につくり、それが結果として参加者の感動につながるような好循環を生み出していきたいです。