音楽シーンの最前線を捉え続ける

メディア部社員に聞く! 雑誌制作とフェスブッキングに必要な視点とは

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メディア部社員に聞く! 雑誌制作とフェスブッキングに必要な視点とは

Introduction

毎月発行される音楽雑誌の企画・編集と、年3回開催されるJフェスのブッキング。一見すると異なる仕事にも思えますが、その根底にあるのは、今届けるべき音楽を見つけ、独自の視点でその魅力を伝えることです。メディア部で両方の仕事に携わる3人に、業務の舞台裏や仕事のやりがい、働くうえで大切な姿勢について語り合ってもらいました。

メディア部 『ROCKIN'ON JAPAN』編集部

メディア部 『ROCKIN'ON JAPAN』編集部

江口

メディア部 『ROCKIN'ON JAPAN』編集部

哲翁


※写真左から順

最新のシーンを追いかけ、独自の視点でアーティストや作品を捉え直す

――早速ですが、皆さんの自己紹介をお願いいたします!

江口

メディア部の江口です。2018年に新卒で入社しました。元々はイベント部で広報やスポンサー営業を担当していましたが、2025年にメディア部に異動し、現在は『ROCKIN'ON JAPAN』編集部のメンバーとして働いています。雑誌の制作や取材対応、一部フェスのブッキングに加え、WEBメディア「rockin'on.com」のSNS運用やデータ分析なども担当しています。

2020年に新卒で入社しました、畑です。僕も江口さんと同じく入社後の2年間はイベント部で広報を担当していました。2022年にメディア部の『ROCKIN'ON JAPAN』編集部に異動し、現在編集部5年目です。特集の企画から取材や撮影現場のディレクション、原稿や写真をまとめて誌面を完成させるところまで、一連の雑誌編集業務を担当しています。自分自身がアーティストにインタビューしたり、ディスクレビューやライブレポートを書いたりすることもあります。
また、Jフェスのブッキングに携わったり、「ROCKIN'ON JAPAN ポッドキャスト」のパーソナリティとしてアーティストにまつわる話をしたりと、雑誌編集で培った関係性や経験を活かした仕事にも取り組んでいます。

哲翁

メディア部の哲翁です。私も2020年新卒入社で、最初の6年間はイベント部でグッズの企画や販売管理、Jフェスのアーティストブッキング管理、データ分析を担当していました。ブッキング管理では、オファーアーティストや、出演日、タイムテーブルなどの提案・調整、議論進行などを行います。
2026年度から編集部に異動し、雑誌の企画・制作や取材対応に加え、引き続きブッキング管理やデータ分析などを行っています。

江口

3人ともイベント部から異動してきたという経歴は同じですが、経験してきた仕事は少しずつ違いますよね。

僕と江口さんはイベント部で広報を経験したことで身についたSNS運用の知識がありますし、哲翁さんはイベント部でブッキング管理に長く携わっていたことでブッキング提案において多角的な視点を持っていて。それぞれ違う視点が集まっていることが、編集部のパワーに繋がっていると思います。

哲翁

私自身は編集部に異動して間もないので、雑誌制作についてはふたりから教えてもらうことも多いですが、これまで経験してきたフェスやブッキングの視点は、編集部でも活かしていきたいと思っています。

――雑誌の制作やブッキングはどのようなスケジュールで動いているのでしょうか?

江口

『ROCKIN'ON JAPAN』は30日発売の月刊誌なので、毎月同じようなスケジュールで動いています。数ヶ月前からどのアーティストにオファーするかを検討し、発売月の上旬までには取材を行います。その後、原稿作成や写真のセレクト、デザイン作業を進め、中旬には入稿。20日前後に最終確認をして校了、という流れですね。

特集によって取材タイミングは異なるので、直近で発売される号を作りながら、その先の号の企画を同時に進めてもいます。WEBメディアの「rockin'on.com」は公開日の制約がないですし、常に複数の企画が並行して進行している感覚です。

哲翁

フェスブッキング業務は、JAPAN JAM、ROCK IN JAPAN FESTIVAL、COUNTDOWN JAPANという年3回のフェスに合わせて動いています。開催の半年以上前から全体の構想を練り始め、ブッキング担当が出演交渉を行いながら、発表タイミングに向けて、出演日やタイムテーブルの調整を進めていきます。アーティストによっては、1年以上も前から交渉をする場合もあります。

江口

雑誌制作は毎月決まったサイクルで動いていて、ブッキングは半年以上かけてラインナップを組み立てていく。仕事の時間の流れは違いますが、どちらも完成形を意識しながら動く仕事というのは共通しているかもしれません。

哲翁

そうですね。でも、最初に立てた構想通りに動けばいいというわけではなくて。その時々の音楽シーンの変化に対応しながら、よりよいかたちを目指して直前まで調整を続けることも重要なんですよね。

――トレンドの移り変わりが激しい中で、企画やブッキングにおいて意識していることはありますか?

江口

シーンの熱量をなるべく鮮度高く届けることができるよう意識しています。
月刊誌はシーンの状況にも対応しやすいんですよね。『ROCKIN'ON JAPAN』には今話題の若手アーティストを取り上げる「Look Up!」というコーナーもあるのですが、どのアーティストを取り上げるかをギリギリまで議論しています。

哲翁

ブッキングも同じですね。毎回、最新の音楽シーンを届けられるラインナップを考えています。ブッキングはかなり早いタイミングからスタートしていますが、フェス開催タイミングで勢いのあるアーティストを取り上げるために、数枠はギリギリにオファーしています。Jフェスはバンドだけでなく、ヒップホップ、ボカロ、ダンス&ボーカルグループ、VTuberなど様々なジャンルの出演アーティストを網羅しているので、各界隈でどんな変化が起きているのかを常にチェックし、ブッキングに反映できればなと。

誌面制作でもブッキングでも、単純にライブ動員やSNSのフォロワー数が大きいアーティストをオファーするだけではなくて。「今、音楽シーンの中でどのようなムーブメントが生まれているのか」「これから大きくなっていくのはどんな界隈なのか」という先を見据えることも意識しています。

江口

そうですね。もちろんデータも重要な判断材料ですが、数字では見えてこないライブの熱量や、ファンの間で生まれている空気もあるんですよね。データの勢いと現場の熱気、会議ではその両方をふまえて議論しています。

哲翁

編集部員それぞれに、好きなジャンルや日頃から追っているシーンがあるんですよね。各自が持っている情報やいちファンとしての感覚を持ち寄って、幅広い音楽シーンを捉えながら、誌面制作やブッキングに携わっています。

――雑誌を作る上で特に意識していることは何ですか?

「なぜ今、このアーティストをJAPANで取り上げるのか」「この記事を通して、読者に何を伝えたいのか」という企画の核を、最初に明確にすることですね。
インタビューする作品について、過去の作品と比べて何が変化したのか、その変化にはアーティストのどのような心境の変化が関係していると思うか、今の音楽シーンの中でその作品がどのような意味を持つのか、といったことを深堀りながら、企画の核を考えます

記事はライターやフォトグラファー、アートディレクターなど複数の人と作り上げるものなので、企画の核がしっかりしていれば、それぞれが同じゴールに向かっていろんなアイデアを出しながら進んでいくことができるのかなと。制作中に迷うことがあったときにも、最初に決めた「この記事を通して何を伝えたいのか」に立ち返れますし、取材準備から写真のセレクト、原稿、デザインまで、すべての判断に一本の軸を通すことができると思っています。

哲翁

雑誌の魅力って、いろんな記事が1冊にまとまってることで生まれる偶然の出会いにもあると思っていて。各号が、新しいアーティストとの出会いや音楽に興味を持つ入り口になることを意識しています。その月の音楽シーンが、いろいろな角度から見えてくる一冊にしたいなと。

――『ROCKIN'ON JAPAN』のいちばんの特徴は、どういったところにあると感じますか?

『ROCKIN'ON JAPAN』が創刊当初から大切にしてきたことなのですが、原稿や写真をアーティストサイドが事前確認せず、編集部が責任を持って記事を作っていることだと思います。
アーティスト自身がSNSやYouTubeを使って発信できる時代において、メディアが記事を作る意味は、編集部独自の視点から、アーティストや作品を捉え直すことにあるのかなと。それもあって、JAPANのインタビューは、単に楽曲制作について聞いていくだけではなく、アーティストがどのような人生を歩み、どんな価値観や葛藤を抱え、なぜ今この音楽を作っているのかというところまで踏み込むことも多いんですよね。
写真でも、そのタイミングでしか見られない表情や、アーティストの新しいイメージを提案することを目指しています。

江口

一冊の中に掲載されているアーティストの幅広さも特徴だと思いますね。第一線で長く活動しているアーティストから、今まさに大きくなろうとしている若手、ジャンルとしてもバンド、シンガーソングライター、ヒップホップ、アイドル、ネット発のアーティストまで、さまざまな音楽や価値観を一冊の中で並べる。自分の好みに最適化された配信サービスとはまた違う形で、今の音楽シーン全体を見渡せるところも、雑誌としてのJAPANの役割だと思います。

幅広い好奇心と、深い追求心

――仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。

江口

雑誌作りでは、編集担当に与えられている裁量が大きく、自由度が高い点にやりがいを感じますね。どんな記事にするかを自分で深く考えたうえで、いろんな方のアドバイスをもらいながらディレクションし、自分の作りたいと思ったものが実際に形になると、とても達成感があります。

アーティストと継続的に仕事をする中で信頼関係が深まり、それまでには作れなかった記事が生まれた時ですね。取材を重ねることで率直に話していただけるようになったり、インタビュー後に「自分でも整理できていなかったことに気づけた」と言っていただけたりすると、聞き手としての意味を強く感じます。

哲翁

ブッキング管理の立場としては、フェス当日に参加者やアーティストがステージを楽しんでいる姿に大きなやりがいを感じます。いろんな価値観や嗜好性を持つユーザー一人ひとりに深く刺さるものを作ろうと挑戦したことが、実際に届いたんだと実感できる瞬間です。
自分たちが良いと思った音楽の魅力を届けた結果、それがユーザーのひとつの思い出や満足度につながる光景を見られるのは大きな喜びですね。

――皆さんの話を聞いていても、すごく誇りを持って働いていらっしゃるのがわかります。メディア部で働く上で、どのような資質が求められると思いますか?

江口

いちばんは、「幅広い好奇心」を持てるかだと思います。
まったく新しいアーティストを取り上げる機会も多いので、あらゆる方面に対して関心を持ち続けられることが重要なのかなと。
また、雑誌作りは社内外の人と一緒に行うチームプレイなので、コミュニケーションを取りながらひとつのものを作り上げていく意識も欠かせません。

哲翁

江口さんの言う通り、幅広い好奇心を持つことと同時に、「何かを深く追求できること」も大切だと思います。音楽に限らず、何かのジャンルでオタク気質というか、一つのことを深く掘り下げて考えた経験がある人は、その視点を仕事にも転用できると思うんですよね。
あとは、仕事柄どうしても読む文章量が多いので、活字を読むのが苦にならないことも重要かもしれません(笑)。

多角的なメディア展開で、「体験の循環」を構築する

――最後に、皆さんが今後やってみたいことや目標を教えてください。

これまで雑誌で培ってきたものを核にしながら、メディアの形をさらに広げていくことですね。
今の時代では、アーティストや音楽との出会い方が多様になっていて、SNSで偶然目にする人もいれば、フェスで初めてライブを観る人、WEBの記事から知る人、音声コンテンツを聴きながら興味を持つ人もいて。それぞれのメディアの特性を生かして、より多くの人に音楽と出会ってもらえたらなと。
SNSや音声をきっかけに初めてアーティストを知った人が、さらに深く知りたくなって雑誌を読む。雑誌で興味を持った人が、実際にフェスでライブを観る。フェスで心を動かされた人が、その後インタビューを読んでアーティストの思想を知るといった、言わば「体験の循環」を作りたいと思っています。

哲翁

私もそう思いますね。編集部がフェスのブッキング管理も担うことで、雑誌とフェスという両方の視点からアーティストにアプローチできるようになりました。雑誌で紹介したアーティストにフェスに出演してもらったり、フェスで活躍したアーティストを雑誌で深く掘り下げたりと、良い循環を巡らせて、より多くの人が良い音楽に出会える場を作っていきたいです。雑誌とブッキングは別々の仕事のように見えますけど、良い音楽を見つけ、その魅力を多くの人に届けるという目的は共通しているんですよね。

江口

それぞれのメディアの良さを活かしながら、アーティストとリスナーが出会う接点を、これからもっと増やしていきたいですね。その思いもあって、私は「rockin'on.com」でのWEB展開やSNSの強化がしたいです。
WEBならではのボリューム感でアーティストの魅力を伝えたり、Instagramで撮影の裏側を発信したりして、雑誌のクオリティの高さや制作の裏側を知ってもらえたらなと。そういった多角的なアプローチを通じて、『ROCKIN'ON JAPAN』というメディアをより多くの人に届けていきたいですね。

哲翁

度々話に出てきていますが、ひとつの記事が完成するまでに本当に多くの方が関わっているんですよね。なぜその写真を選んだか、どういう思いでデザインしたかなど、制作過程一つひとつに魅力が込められているので、いろんなかたちで伝えていきたいです。

『ROCKIN'ON JAPAN』で新しい才能をいち早く紹介し、インタビューを重ねながらそのキャリアを記録して、そのアーティストがフェスの大きなステージに立つところまで一緒に歩んでいくことが、メディアとしての理想だなと思っています。雑誌、音声、デジタル、リアルなライブ体験をつないで立体的な物語を作りながら、アーティストと読者、参加者が長く関係を築いていけるようなメディアを目指したいです。